10羽から、20羽へ。
我が家だけで卵を消費するのではなく、目に見える関係性の中で、卵を分かち合えるような暮らしへ——第5話の終わりに、そう書いた。
その転換のタイミングは、「晴耕くらし舎」を立ち上げる時期と、ちょうど重なっていた。
20羽という、規模の意味
20羽という数字には、わたしたちにとって意味があった。
10羽規模では、6人家族の自家消費でほぼ完結する。
調子のいい時で、ちょうど我が家の食卓を満たすぐらい。
それが20羽になると、自家消費を超えた卵が、家にある状態が増える。
日によっては、1日に10個ほどの卵が手に入ることもある。
そうなると、自ずと、他の人にも食べてもらえる卵が、生まれてくる。
目に見える関係性の中で、卵を分けたり、物々交換したり。
あるいは、小さな生業として、卵を売っていったり。
そういうことが成り立つレベルが、20羽だった。
ながみねファームさんという存在
20羽規模の鶏舎を建てるにあたり、相談に乗ってくれた人がいる。
福山で平飼い養鶏をされている、ながみねファームの長嶺さんだ。
長嶺さんは、アニマルウェルフェアまで踏まえた、本格的な養鶏家。
動物福祉の視点をしっかり持ちながら、卵を売っていく実践家だ。
それまでも、飼育のことで困った時には、相談に乗ってもらっていた。
鶏舎を建てるにあたっては、彼の鶏舎を実際に見せてもらい、参考にすることにした。
ビニールハウスの骨組みで、建てる
ながみねファームさんの鶏舎は、ビニールハウスの骨組みを使って建てられていた。
広々した空間で、鶏がのびのびと暮らしている。
そして何より人間が立って入れる広さ。骨組みがしっかりしていて、強度もある。
建設のコストも抑えられる。
これまでの試行錯誤で見えてきた設計思想——人間が立って入れる小屋——に、ぴったりの構造だった。
そう思っていた時、また縁が巡ってきた。
たまたま、農家さんから長嶺さんに
「使わなくなったビニールハウスの骨組みがあるんだけど、いる?」
と声をかけてもらったのだ。
何かの縁としか思えない。
「ぜひ、いただきます」
即答して、現場に向かった。
約30㎡の鶏舎が、完成







いただいたビニールハウスの骨組みを組み、網を張り、遮光のビニールをつけた。
完成した鶏舎は、約30㎡。
これまでの小屋とは、比べ物にならない広さだった。
人間が立って入れる。
掃除がしやすい。
鶏たちを観察しやすい。
何かあった時の修繕もしやすい。
第5話で「見えてきた」と書いた設計思想が、この鶏舎で形になった。
20羽の鶏たちと、新しい暮らし
その鶏舎の中を、20羽の鶏たちが、自由に歩き回るようになった。
地面をついばみ、砂浴びをし、卵を産む。
調子のいい日は、1日に10個の卵が手に入る。
冬は数が減るし、季節のリズムで波もあるけれど、目に見える関係性の中で卵を分かち合える、そんな日常が、ようやく始まった。
耕太
連載「鶏のいるくらし」第7話へつづく


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