うさんちゃんとコッコちゃんがうちに来てから、鶏のいる暮らしは、少しずつ広がっていった。
知り合いの知り合いから、また別の鶏を迎え入れることもあった。
羽数が増えると、小屋だけでは手狭になる。
庭に放ってもみた。
自由に走り回る鶏たちを眺めている時間は何とも和むものだった。
しかし、気が付くと野犬や野良猫に襲われる悲しい事件も経験した。
庭をもっと鶏のために活かせる仕組みが必要になってきた。
そこで、チキントラクターを作ることにした。
チキントラクターという発想
チキントラクターは、パーマカルチャーの本でよく出てきた発想だった。
可動式の小屋に鶏を入れて、日中、草を食べさせる。
糞を落としてもらい、地面をついばんでもらう。
そのうちに、その場所の雑草は抑えられ、土も豊かになる。
鶏が「土を耕す」役割を担ってくれるから、「チキントラクター」と呼ばれる。
数日経ったら、隣の場所に移動させる。
畑に変えたい場所、雑草を抑えたい場所、土を豊かにしたい場所——そんなところを、鶏と一緒に巡っていく。
これは、自分の中でワクワクするものがあった。
第一号のチキントラクター
第一号のチキントラクターは、ダイナミックラボのテンダーさんが公開している「チキントラクターAIR」を参考に、トマト農家のための小型ビニールハウスのパイプを使って、かまぼこ型に作った。
参考にしたサイトのトラクターは、モバイル性を重視して、シンプルな作りになっていた。
ただ、我が家は犬や猫に襲われる事件もあったので、もっと頑丈にしたかった。
補強し、地面からの侵入を防ぐ工夫をし、夜も安心して鶏が眠れるような作りにした。
その結果、持ち運びという点では、なかなか難しいほどの重量になってしまった。
それでも、その場所に置けば、雑草が一切生えないエリアになる。
鶏の糞や餌の残りが、いい具合に土に混じり、畑に適した土に変わっていく。
土壌改良の意味でも、大きな意味を持つ小屋だった。
産卵箱を用意し、卵にアクセスできる取り出し口もつけた。
畳一畳分のスペースに何羽かの鶏を入れて、寝かせては引っ越し、寝かせては引っ越しを繰り返しながら、畑の土作りを進めていった。

第二号のチキントラクター
もう一台、第二号のチキントラクターも作った。
こちらは廃材を使い、大きめのタイヤをつけて、がっしりとした頑丈な作りに。
2階建て構造にして、卵が転がる滑り台のような取り出し口もつけた。
床面には、イノシシ除けのフェンスなどにも使われるメッシュのフェンスを張った。
鶏は地面をついばんだり砂浴びをしたりできるけれど、外からの動物は侵入できない。
トラクターとしての機能を発揮しながら、外敵から鶏を守る工夫だった。

試行錯誤の中で見えてきたこと
二台のチキントラクターを使うようになって、見えてきたことがある。
日中だけそこに放して、草を食べさせたり、土壌を改良するために使うのであれば、産卵箱や夜の獣からの被害を防ぐための強度などに、そこまで力を入れなくてもよい。
むしろ、機動力——軽くて運びやすいサイズと作り——を重視した方がいい。
そこに、産卵スペース・寝泊まり・食事と、一日の鶏の生活を全部そこで完結させようとすると、必要な機能はどんどん増えていく。
その結果、場所を移動させるのが、簡単ではなくなる。
さらに、雨が続いて地面がびしょびしょになった時。
鶏の糞や餌の食べ残しが、ぐちゃぐちゃに混じり、何とも言えない地面の状態になってしまうこともある。
そういう時、トラクターを移動させ、富栄養化した地面の上に落ち葉を敷いて、発行するような形にすることで、その土地は時間をかけて、野菜が育つのに最高のコンディションになる。
可動式だからこそ、地面の状態に合わせて柔軟に対応できる。
それは、固定式の小屋にはない大きな利点だった。
かぼちゃの、こぼれ種
ある日、思いがけないことが起きた。
チキントラクターのあった場所から、かぼちゃの芽が出てきたのだ。
おそらく、鶏にあげたかぼちゃの種が、糞と一緒に出てきたのだろう。
信じられない勢いで、すくすく育っていった。
我が家で食べたかぼちゃが、鶏のお腹を通って、土に還り、また育つ。
こぼれ種の、かぼちゃ。
そんな循環が、庭で起き始めていた。
耕太
連載「鶏のいるくらし」第5話へつづく


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